あなたはこれからレンタカー許可の取得を考えており、この記事にたどり着いたのだと思います。
レンタカー許可といっても、「何から着手すればいいのか?」、「どのくらいの手間と時間がかかるのか?」といった疑問をお持ちの人も多いのではないでしょうか?
ところであなたは、行政書士という行政手続きを代行する専門家をご存知ですか?
私もその1人で、特にレンタカー許可の申請手続きに特化しています。
今回はレンタカー許可の申請手続きを初心者でも分かるように行政書士の視点から解説したいと思います。
許可取得に必要な書類、知識はもちろん、営業開始までの行政手続きをあなたが効率的に、かつ、スムーズに進めることができるように詳しく解説しています。
非常に長いコンテンツですが、ぜひ最後まで一読ください。
Contents
レンタカー許可とは
レンタカー事業の正式名称は自家用自動車有償貸渡業といいます。
国から営業許可を取ることで自動車を有償で貸し出す事業を行うことができます。
許可の手続きは営業所を管轄する運輸支局で行います。
ちなみに、レンタカーを運転手付きで貸し出すことはできません。運転手の紹介や斡旋という場合も同様です。
有償で利用客を運送する事業を行うには、「旅客自動車運送事業の許可」が必要となります。
事前知識
レンタカー許可は1つの都道府県から取得すれば、全国どこでも有効です。
営業所が他の都道府県に複数あるからといって都道府県ごとに取得する必要はありません。
また、レンタカー許可には有効期間がありません。よって更新手続きは必要ありません。
個人と法人のどちらで申請するか決めましょう
個人と法人は、法律上では人格が異なります。
申請は個人名義か法人名議のどちらか一方で行うことになります。
例えば、法人の代表者が個人名義のレンタカー許可を取得していても、その免許で法人としてレンタカー事業を行うことは出来ません。
この場合は、譲渡譲受という手続きが必要となります。また、運輸支局によっては法人名議で許可を取り直さなければならないところもあります。
法人化に関して何か疑問のある方はぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
レンタカー許可|法人化するメリットはデメリットを超えてますか?
レンタカー許可取得に必要な要件
では本題に入っていきましょう。
レンタカー許可を取得するには最低限クリアしなければいけない条件(以下、要件)があります。
要件は次の3つです。
- 欠格要件
- 車両の要件
- 保険加入の要件
1つずつ確認していきましょう。
欠格要件
これは普通に日常生活を送っていれば、すでにクリアできていることばかりですが、以下に当てはまらないかきちんと確認をしておきましょう。
- 1年以上の懲役または禁錮の刑を受けてから2年を経過していない者
- 各種運送事業の許可を取り消されてから2年を経過していない者
- 申請者が未成年または成年後見人である場合、その法定代理人が上記1、2に該当する者
- 申請日までの2年間、自動車運送事業経営類似行為により処分を受けていない者
※法人の場合は申請者の他にも役員も対象となります。
車両の要件
レンタカー事業で使用できる車両は以下のものに限ります。
- 自家用自動車
- 自家用マイクロバス(乗車定員29人以下、車両全長7m未満)
- 自家用トラック
- 特種用途自動車
- 二輪車
※マイクロバスの貸し出しは、レンタカー事業で2年以上の経営実績、また、車両停止処分を受けていないことが必要です。
逆に以下の車両はレンタカー事業では使用できません。
- 自家用バス
- 霊柩車
※自家用バスとは、「乗車定員30人以上または車両の長さが7mを超えるバス」のことです。
整備管理者の配置が必要となるケース
下記の車両扱う場合は、整備管理者を配置しなければなりません。
- バス(乗車定員が11人以上の車両)→ 1台以上
- 大型トラック等(車両総重量8トン以上)→ 5台以上
- その他の車両 → 10台以上
整備管理者は誰でもなれるという訳ではなく、資格や実務経験が必要となります。
また、レンタカー事業の場合は、整備管理者を外部へ委託をすることも可能です。
整備管理者についてはこちらのレンタカー事業|整備管理者になるための条件と外部委託についてで詳しく解説しています。
保険加入の要件
レンタカー許可申請では資本金などの財務状況を審査されることはありませんが、車両への任意保険の加入が義務付けられています。
最低限、下記の補償内容の保険に入ることが必要です。
- 対人保険:1人につき8,000万円以上
- 対物保険:1事故につき200万円以上
- 搭乗者保険:1人につき500万円以上
上記の補償内容ではリスクが高過ぎるので、通常は、対人保険と対物保険に関しては無制限で加入します。
任意保険についてはこちらのでレンタカー事業で必要となる自動車保険の全体像を解説で詳しく解説しています。
ここまでの要件については下記の記事でも詳しく解説しています。
営業所と車庫について
「営業所と車庫について何か要件が定められているのではないか?」と疑問に思う方もおられるかもしれません。
しかし、レンタカー許可申請においては広さや設備など要件は特に定められていません。
強いて言うとすれば、車庫に関しては営業所から2km以内の位置に構える必要があります。
営業所と車庫に関して何か疑問があるという方は以下の記事を一読ください。
スケジュールの確認
ここまで確認事項や検討事項が色々あって大変でしたが、いよいよ申請に入っていきます。
ここでは、申請手続きから事業を開始するまでの流れをざっくり見てみましょう。
審査期間は約1ヶ月前後ですが、書類の作成にも1ヶ月程度費やすことも珍しくありません。
また、書類に不備があれば、補正が必要となるのでさらに時間がかかってしまいます。
そして、許可が下りても、レンタカー車両への登録、いわゆる、「わナンバー登録」をしなければ営業は開始できません。
書類の準備から営業開始までの期間はおよそ2ヶ月程度はかかると見積もっていた方が無難でしょう。
書類の作成
それではさっそく手続きで必要となる書類を作成に入りましょう。
レンタカー許可申請で必要となる書類は
- 申請書類
- 添付書類
の2種類に分かれます。
それぞれ確認していきましょう。
申請書類
申請書類は1枚のものに記載するのではなく、以下の4種類のものを仕上げていくことになります。
- 自家用事業自動車有償貸渡許可申請書
- 宣誓書
- 事務所別車種別配置車両数一覧表
- 貸渡しの実施計画
上記の書類は、運輸支局の窓口で入手、もしくは、各都道府県の運輸支局のホームページでもダウンロードできます。
自家用事業自動車有償貸渡許可申請書
宣誓書
事務所別車種別配置車両数一覧表
貸渡しの実施計画
申請書類の書き方はこちらのレンタカー許可申請の必要書類の一覧を参考にしてください。
添付書類
申請書類とは別に添付書類として以下のものが必要です。
- 登記簿謄本(法人)
- 住民票(個人)
- 料金表
- 貸渡約款
登記簿謄本
法人の場合は登記簿謄本が必要です。法務局で取得します。
登記簿謄本の事業目的欄には「レンタカー業」や「自家用自動車有償貸渡業」といった記載が必要です。
ただし、ここは運輸支局によって扱いが異なります。事業目的の記載を不要とする運輸支局もありますし、受理後、許可が下りるまでに事業目的を記載して再提出すればOKとする運輸支局もあります。
必ず事前に確認をしておきましょう。
住民票
個人の場合は住民票が必要です。
料金表
車両を貸し渡す際の料金表が必要です。
営業開始直前に決めたいという方もおられるかもしれませんが、許可申請の段階で料金を決めておかなければなりません。
貸渡約款
貸渡約款というとあまりピンとこないかもしれませんが、貸渡し時のルールなど契約内容を事細かくまとめたものです。
書類作成で一番手間がかかるのはこの貸渡約款の作成です。
貸渡約款についてはこちらのレンタカー事業で必要となる貸渡約款について解説で詳しく解説しています。
申請
申請書類を正本・副本2部用意し、主たる営業所を管轄する運輸支局に提出をします。
申請書類が受け付けてもらえるのは、平日の日中のみです。
審査期間
運輸局は、審査期間に関して「大体このくらいの期間で結論を出しますよ」、という日数を定めています。
レンタカー許可申請の場合は1ヶ月と定められています。
ただし、この期間は混み具合やその時の状況によって前後します。
また、書類に補正があれば書類が再度提出されるまで、審査はストップしていまいますのでさらに日数がかかってしまいます。
許可証の交付
審査が終了し、許可証の交付準備が整うと、運輸支局から連絡があります。
日程を調整して運輸支局の窓口に向かいましょう。
窓口でレンタカー許可証が交付され、同時に登録免許税90,000円の納付書が手渡されるので金融機関や郵便局などで納付します。
期限は1ヶ月以内です。
また、整備管理者の配置が必要な場合は、この時に「整備管理者選任の届出」を提出しましょう。
※届出は整備管理者を外部委託をする場合でも必要です。
わナンバー登録
登録免許税を納付したら、納付書を運輸支局の窓口に提出します。
その際に、わナンバー登録で必要となる「レンタカー事業者証明書」もしくは「事業用自動車連絡書」というものを交付してもらいます。
(上記2つのうちどちらが必要となるかは地域によって異なります。)
わナンバー登録は運輸支局ではなく陸運局で行います。陸運局の車両登録の窓口で上記書類と車検証等を提出します。
※わナンバー登録の手続き方法はこちらのわナンバー登録の手順と必要書類について解説で詳しく解説しています。
ここまで来ていよいよ営業開始となります!
許可後に必要な義務
国から許可を取るということは、それだけ責任が伴うということです。この責任を全うするために許可取得後は、以下の義務を果たさなければなりません。
- 掲示
- 記録
- 報告
- 変更届
1つずつ確認していきましょう。
掲示
次のものを営業所において利用者の見えやすい場所に掲示しなければなりません。
- 労務供給の禁止の旨を記載したもの
- 料金表及び貸渡約款
先述のとおり、レンタカーを運転手付きで貸し出すことはできません。その旨を掲示します。
「貸渡しに付随した運転手の労務供給(運転手の紹介及びあっせんを含む)は行いません」といった文言を掲示します。
また、貸渡約款と料金表は申請時に提出した同じ内容のもを掲示します。
記録
次の2つのものを記録し、保存する義務があります。
- 貸渡証
- 貸渡簿
貸渡証とは、利用者や運転者の氏名、住所、貸渡し日時、ルールなどを記載したもので、利用者に交付し、運転者に携帯させなければなりません。
一方、貸渡し簿は、日々のレンタルの取引状況を記録するもので、氏名や住所、貸渡し日時の他にも、走行キロ数、貸渡料金なども記載します。
貸渡簿は2年間保存する義務があります。
※詳しくはこちらのレンタカー許可後に課せられる掲示義務と記録義務で解説しています。
報告
次の2つの書類を作成し、毎年5月31までに、管轄の運輸支局に届け出なければなりません。
- 貸渡実績報告書
- 事務所別車種別配置車両数一覧表
貸渡実績報告書とは、貸渡簿の内容をもとに貸渡した実績を記載します。
前年分(4月1日~3月31日)までの実績を記載します。
一方、事務所別車種別配置車両数一覧表とは、営業所ごとの配置車両を一覧表にしたもので、4期分(6月、9月、12月、3月の時点のもの)記載します。
※詳しくはこちらのレンタカー許可後に課せられる2つの報告義務で解説しています。
変更届
許可取得後、営業所の移転や増設、車両の増車、役員の変更など当初の内容に変更があったときは管轄の運輸支局に変更届を提出しなければなりません。
※詳しくはこちらのレンタカー許可後の変更届で知っておきたいポイントで解説しています。
中古車を扱う場合は古物商許可が必要?
これから中古車を購入してレンタカー事業始めようという人も少なくないのではないでしょうか。
実は中古車を扱ってレンタル事業を始める場合、「古物商許可」が必要となるケースがあります。
「レンタルでも必要?」と思う人もいるかもしれませんが、中古車(中古品)を買い取ってビジネスをすれば通常は古物営業に該当するからです。
レンタカー許可の申請先は運輸支局ですが、古物商許可の申請先は警察署です。
また、古物商許可が必要となるかどうかは申請先の警察署によって判断が異なることがあるので、事前に確認が必要です。
こちらのレンタカー業で古物商許可が必要となるケースは?でも解説していますのでご興味がある方は一読ください。
審査期間が異なる
ここで注意したいのは、審査期間が異なる点です。
レンタカー許可の審査期間は1ヶ月ですが、古物商許可はおよそ2ヶ月です。古物商許可の方が審査期間が長くなります。
2つの許可を同時に申請をすれば、古物商の許可が下りるまで待たなければならないという事態に陥ってしまう可能性があります。
開業を急ぐ人は、レンタカー許可よりも古物商許可の手続きから始める方が得策です。
※これから古物商許可を取得する人向けに以下の記事を用意しました。許可の取得にお役立てください。
その他、お役立ち情報など
開業時に受けやすい融資制度について
融資と言えば、「連帯保証人が必要」、「審査が厳しい」、「金利が高い」といった理由で実際なかなか踏み出せないという人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、日本政策金融公庫の新創業融資制度といって開業時でも無担保・無保証で利用できる融資制度があります。
金利も安く設定されており、業績がなくてもしっかりした準備と計画を用意すれば、開業時でも融資を受けることができます。
※詳しくはこちらのレンタカー事業の新規開業者に優しい新創業融資とは?で解説しています。
フランチャイズへ加盟する
フランチャイズに加盟すれば、ブランド名の使用やノウハウの享受により事業成功の可能性が高まります。
ただし、費用がかかるなどデメリットもいくつかあります。フランチャイズの選択はメリット・デメリットを比較して慎重に検討しなければなりません。
詳しくはこちらのレンタカー事業でフランチャイズに加盟するメリットとデメリットで解説しています。
行政書士へ依頼する
レンタカー許可を効率的、そして安全に取得したいという場合は、行政書士という専門家に代行を依頼するという選択肢もあります。
行政書士に依頼をした場合に支払う報酬額の相場は6万円前後と決して安くはありませんが、書類の作成から申請まで手続きを丸投げすることができます。
仕事などで「時間がない」、「手間をかけたくない」といった場合はメリットを享受できるかもしれません。
ご興味がある方はこちらのレンタカー許可申請を行政書士に依頼をするメリットを一読ください。
まとめ
お疲れ様でした。
今回は主にレンタカー許可の取得手順について解説しました。
営業開始まで以下の手順を踏みます。
- 要件の確認
- 書類の作成
- 申請
- 許可証の受取
- わナンバー登録
許可が下りても、レンタカー車両をわナンバー登録しなければ営業は開始できません。
また、許可申請で一番骨の折れる作業は個人的には貸渡約款の作成だと思っています。
申請の審査期間は1ヶ月ですが、書類の作成に時間を取られてしまうと営業開始までさらに時間がかかってしまいます。開業を急ぐ人は早めにとりかかるようにしましょう。
書類の作成から手続きまで非常にボリュームのある内容となりましたが、当サイトを参考にぜひチャレンジしてみて下さい。