個人事業でレンタカー事業をスタートさせて売上が順調に伸びてくると、法人化を検討する人も少なくありません。
あるいは、レンタカー事業の許可を取得するにあたって、「個人」で取るか「法人」で取るか迷っている人もいるかもしれません。
いずれにしても、「個人で取得したレンタカー許可を法人名義で使えるのか?」あるいは、「個人から法人へと引き継ぐことができるのか?」というのはみなさん大きな関心事ではないでしょうか。
そして、レンタカー事業の法人化の際は、注意しなければならいポイントがいくつかあります。
今回は、「レンタカー許可の法人への承継」について詳しく解説していきます。
法人化の際は、法人化が自身の事業経営に適しているのか慎重に検討する必要があります。
法人化によるメリット・デメリットの理解がまだ浅い人は以下の記事を合わせて読むことをお勧めします。
Contents
個人名義のレンタカー許可を法人で使うことはできる?
結論から言うと、個人名義で取得したレンタカー許可をそのまま法人で使用することはできません。
「個人で取得した許可の名義人が法人の代表者となるなら問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、個人と法人は法律上、「別の人格」とみなされるので、個人で取得した許可をそのまま法人として使用することはできません。
個人名義の許可は法人へと引き継ぐことができる?
では、レンタカー許可は法人名義で取り直さなくてはならないのでしょうか?
実は、レンタカー許可の場合、譲渡譲受という手続きによって個人名義の許可をそのまま法人へと引き継ぐことができます。これは運輸支局が柔軟に対応してくれる傾向にあるからです。
ただし、運輸支局によって対応は異なってきます。
※中部運輸支局の場合は、承継手続きは認められず、原則、法人として新しくレンタカー許可を取得する必要があります。
管轄の運輸支局が承継手続きを認めてくれるなら、改めて許可を取り直す必要はないので、申請手数料9万円もかかりませんし、1ヵ月の審査期間もありません。
他の各種手続きも必要
個人から法人へと移行する際は、想像以上に多くの手続きが必要です。
会社設立や許可の承継手続き以外にも、例えば、各種名義変更なども必要となります。
前述のとおり、個人と法人は、「別の人格」とみなされるので、例えば、個人名義となっているレンタカー車両は法人名義へと変更をしなければなりません。
このような手続きも許可が承継されたら、忘れずに行うようにしましょう。
他の営業許可を取得している場合
レンタカー許可は、譲渡譲受という手続きによって個人から法人へとスムーズに承継できますが、実はこのようなケースは稀です。
他の営業許可は、原則、法人として取り直しとなることが少なくありません。
例えば、中古車を扱う場合、古物商許可を取得していることもありますが、古物商許可の場合は法人名義で新しく許可を取得しなければなりません。
詳しくはこちらの古物商許可|個人から法人へ移行する際のポイントを解説!で解説しています。
特に古物商許可の場合は、個人名義の許可で法人として使用すると名義貸しとなり、もっとも重い罰則が適用されるので注意が必要です。
法人でレンタカー許可申請をする際の注意点
法人を設立してレンタカー許可申請をする場合、個人名義での手続きと異なるのは次の2点です。
- 登記簿謄本の事業目的への記載
- 役員全員が欠格要件に該当していない
これから法人として許可を取得する人は、上記2点に注意して申請手続きをしましょう。
また、個人から法人へと承継する場合も上記2点はクリアしなければなりません。
登記簿謄本の事業目的への記載
法人名義でレンタカー許可申請をする際は登記簿謄本を提出する必要があります。
登記簿謄本の事業目的欄には、「レンタカー業」や「自家用自動車有償貸渡業」といった記載が必要です。
法人の場合は事業目的に記載されている内容の事業以外を行うことはできないからです。
登記簿謄本は、法務局で取得します。
役員全員が欠格要件に該当していない
個人名義でのレンタカー許可申請では、申請者のみが欠格要件に該当しなければ許可を取得することができました。
しかし、法人の場合は、役員全員が欠格要件に該当していないことが必要です。
欠格要件とは、主に下記のものです。
- 1年以上の懲役または禁錮の刑を受けてから2年を経過していない者
- 各種運送事業の許可を取り消されてから2年を経過していない者
- 申請者が未成年または成年後見人である場合、その法定代理人が上記1、2に該当する者
- 申請日までの2年間、自動車運送事業経営類似行為により処分を受けていない者
詳しくはこちらの3分で理解できるレンタカー許可基準(要件)のすべてで解説しています。
まとめ
いかがでしたか?
個人で取得したレンタカー許可を法人として使用することはできません。
しかし、譲渡譲受という手続きによって個人名義で取得した許可を法人へと引き継ぐことは可能です。
ただし、中部運輸支局のように法人への引継ぎを一切認めない運輸支局もあります。この場合は、残念ながら新たに法人としてレンタカー許可を取得しなければなりません。
また、古物商許可のような他の営業許可は、法人として取り直しとなることが多いので注意しましょう。
法人へと引き継いでからは、法人として名義変更の手続きも必要です。車両や営業所など個人から法人へと名義を変更しなければならないことはたくさんありますので忘れずに行いましょう。