レンタカー事業を運営している方の中には、自動車販売業や自動車整備業を営んでいる方も多くいらっしゃるでしょう。
ところで、あなたは回送運行許可というものが気になっていてこの記事にたどり着いたのではないでしょうか?
あなたが車検切れや未登録の車、つまり、ナンバーのない車を日常的に仮ナンバーで自走したり、陸運送会社に依頼をしているという場合は、回送運行許可を取得することで大幅なコストダウンはもちろん、業務効率まで大きく向上させることができる可能性があります。
今回は、回送運行許可の特徴を解説するとともに、回送運送許可を取得するために必要なことを分かりやすく解説します。
回送運行許可とは?
車検切れ、抹消登録済み、未登録の自動車は公道を走らせることはできません。
この場合、キャリアカー(積載車)で運んだり、陸運送会社に依頼をするという方法もありますが、許可を取得することで自走できる方法があります。
その1つが、回送運行許可というもので、ナンバーが赤枠で囲まれている、いわゆるディーラーナンバーと言われているものです。
また、よく似たものに臨時運行許可(仮ナンバー)というものもありますが、回送運行許可に比べると限定的で利便性の面ではやはり劣ってしまいます。
※臨時運行許可と回送運行許可の違いはこちらの回送運行許可と臨時運行許可の違いがこれで一目瞭然!で詳しく解説しています。
回送運行許可の特徴
回送運行許可の場合は、自賠責保険を車両ごとにかけるのではなく、ナンバーにかけることになります。
そして、このナンバーを使い回すことで有効期間内なら何台でも車両の運行が可能となります。
有効期間は最長で5年です。
申請先 | 運輸支局 |
有効期間 | 最長5年 |
申請者 | 定められた4業種のみ |
手数料 | 1ヶ月2,050円からスタート |
自賠責保険 | ナンバーにかける(年間13,000円程) |
車両数 | ナンバー1枚に対して何台でも可能 |
使用用途 |
業務で必要となる車両の回送 |
申請者について
申請をするには次の4業種のいずれかを営んでいる方に限ります。
- 自動車の製作
- 自動車の販売
- 自動車の陸送
- 自動車の分解整備
また、上記に加えて「営業実績」や「運行実績」等許可の要件をクリアする必要があります。詳しくは後述します。
使用用途について
車検を取る、登録をするといった目的以外にも業務で必要となる車両の回送が可能です。
例えば自動車販売業であれば、仕入れ先から営業所への回送や展示場への運行、また製作業であれば工場から依頼者への回送やテストコース間の回送などその業務を遂行する目的での運行が可能です。
手数料について
許可証の交付手数料が必要になります。
手数料は有効期間によって異なり、1ヶ月単位で変動します。
1ヶ月2,050円からスタートし、最長5年の有効期間で60ヶ月分の123,000円が必要となります。
手数料の算出についてはこちらのページを参照してください。
許可を取るには要件をクリアすることが必要
回送運行許可を取得するには、条件(要件という)をクリアしなければなりません。
許可の要件は全国の運輸局ごとに決められており、ある程度の「営業実績」や「運行実績」などが求められます。
要件は運輸局によって異なってきますが、ここでは近畿運輸局のものを紹介します。
製作業者
1か月平均の制作車両数が10台以上
販売業者
1か月平均の販売車両数が10台以上(新車・中古車を問わない)
ただし、輸入車販売業者の場合は、1か月平均の販売車両数が5台以上
陸送業者
1、製作または販売を業とする者と1年以上の回送委託契約を締結し、回送自動車の運行管理に自ら責任を負う者であること。
2、陸送業務に直接従事する運転者数が10名以上であること。(以下ア・イの者は除く。)
ア、貨物自動車運送事業者または貨物利用運送事業者の場合は上記2に代えて、
- 回送業務に従事する運転者および専ら自動車を積載する事業用自動車を有することが必要。
イ、湾港運送事業者の場合は上記2に代えて、
- 回送業務が自動車置き場から埠頭の区間又は埠頭内において行われるものであることが必要。
分解整備事業者
許可申請の直前1年間の臨時運行許可に基づく運行実績が7台以上あること。
※更新の場合は許可申請の直前1年間の回送運行の許可に基づく回送運行実績が7台以上あること。
申請の際は、上記の定められた要件をクリアしていることを書類で証明しなければなりません。
例えば、中古車販売の場合だと古物台帳や契約書などから販売実績が読み取れることが必要です。
これから許可の取得を考えている方は実績を証明できる書類がそろうようにしっかり管理していく必要があります。
申請について
申請窓口
営業所を管轄する運輸支局になります。
営業所が複数ある場合は、その中から主となる営業所を1つ選択し、管轄の運輸支局に申請します。
※神戸の場合は、神戸運輸監理部に申請します。
必要書類
大まかに言うと、
- 回送運行許可申請書(1号様式)
- 運転者等に対する法令関係研修の実施計画(第3号様式)※1
- 管理責任者等の営業所への配置計画(第4号様式)※2
- 社内取扱内規を記載した書面※3
- 法人登記簿謄本(法人のみ)
- 住民票(個人のみ)
- 営業所の周辺地図や写真
- 営業・運行実績を証明できる書類
- (制作・販売・陸送・分解整備)を業とすることの書面※4
が必要となります。必要書類は管轄の運輸局によって異なってきます。ここで挙げたものはごく一般的なものです。他にも書類が必要となることがあるので事前に管轄の運輸局で確認してください。
運転者等に対する法令関係研修の実施計画(第3号様式)※1
運転者に対して運行回送について1年分の研修実施計画を記載します。(年月日、対象者、研修内容、講師名などを記載)
管理責任者等の営業所への配置計画(第4号様式)※2
管理責任者を選任し、責任者名や職名などを記入します。(管理責任者の選任に資格等は必要ありません。)
社内取扱内規を記載した書面※3
回送運行業務を適正に行うために、ディーラーナンバーの使用・保管方法、管理責任者の職務、運転者の遵守事項など様々なルールを定めたものです。
こちらの社内取扱規定(※標準様式)は近畿運輸局が公開している標準様式です。参考にしてください。
(制作・販売・陸送・分解整備)を業とすることの書面※4
業態によっては組合や協会など関係団体から証明を受けることが必要となります。もしくは、古物商許可のような営業許可や取引先の委託契約書などを提出します。
ご自身の業態によって求められる書類は異なるので、申請前に必ず管轄の運輸支局で確認を取ってください。
ディーラ―ナンバー取得までにどれくらいかかる?
一般的には、申請から1ヶ月半~2ヶ月程度かかります。
運輸支局やその時の込み状況、事業形態によって前後します。
まとめ
いかがでしたか?
回送運行許可の主なメリットは
- 有効期間は最長で5年間
- 自賠責保険はナンバーに対してかける
- 1枚のナンバーに対して何台でも回送できる
- 「車検」、「登録」以外にも業務で必要となる車両の回送が可能
ということでした。
ただし、回送運行許可は、限られた4業種でかつ、営業実績や運行実績などの要件をクリアする必要があります。
要件をクリアしていても、それを書類で証明できなければ許可は取得できません。
また、許可が下りると許可書がもらえますが、さらにそこから許可証と許可番号票(ディーラーナンバー)の交付を受けるための別の申請が必要になります。
手数料はこの時に支払うことになります。
※詳しくはこちらの回送運行許可の取得後に必要な手続きと義務について解説で詳しく解説しています。